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遠くて音は聞こえないけれど健気に小さな波を立てながらこっちにむかってくる。
「私たちから見たらみんな同じ姿に見えるけれど、お魚さんたちもそれぞれ自分に一番合う水を求めていろんなところを泳ぎ回っているの」
マミィの言葉はずっと知的だけどちぐはぐだった。
「だから離れ離れになる事だってあるのよね」
マミィはぎゅっと僕を抱きしめた。
さっきダディが叩いた僕の肩口が熱い水で滲んでいく感触を味わいながら、
横目でトイフィッシュを追うと波にさらわれたのか、
もう姿を消していた。
水中モーターの轟音と、
強い海風に流されたマミィの髪や肌に僕はギュッと締め付けられた。
それからいつ僕たちがゴールに着いたのかはよく覚えていない。
いや、
むしろ何がゴールだったのかわからなかった、
といった方が正解だろう。
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