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帰りの飛行機の便で父が乗っていない事を知り、
僕はあらためてあの船着き場の人影がやはりダディであり、
マミィと僕を置いてあのトイフィッシュのようにどこか遠くの海か川に違う水を求めて消えてしまったのだと理解した。
マミィは何度も泣きながら謝って来たのだけれど、
これはきっと川が海に流れるのと同じように誰にも止められない事なのだと、
もうちょっと大人になった後で僕はわかった。
あの飛行機の窓から見下ろしたブルーを見て
“あの時すでにトイフィッシュは水の底深く溺れてしまっていたのではないか?”
と考えていた事だけは今でも鮮明に覚えている。
因みに後から誰かに聞いた話だけれど、
あの川一帯は工業廃水が垂れ流されて、
とても生きた魚の住める水質ではなかったのだという。
あれから時は流れてマミィは何人か新しいボーイフレンドを作ったり別れたり、
ダディの息子と名乗る10コ下の青年に彼の死を知らされてこともあった。
本当にいろんな事があった。
大人になり随分経ったのだなあとつくづく思う。
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