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「おはよ」
駅のホームで電車を待っていると、幼馴染の紗世が声をかけてきた。俺はちょっとバツが悪かったから短く返事を返した。すると紗世はすっと俺の隣に並んだ。
「最近朝早いんだね」
「もう遅刻したら、進級がヤバイからさ」
「ふーん」
紗世はつまらなそうに口を尖らせる。横目でその様子を盗み見てると、不意に紗世が顔を向けてきたから、思わず視線を逸らしてしまった。
「……あのさ」
「え?」
紗世が口を開こうとした瞬間、ホームにアナウンスが流れ、紗世の言葉をかき消した。
「なんて言った?」
「……なんでもない」
紗世はぷいっとそっぽを向いてしまった。少し不機嫌そうな表情になんて声をかければいいか見当もつかず、気まずい空気が流れた。
そうこうしている内に小田急線の急行電車がホームに進入した。俺はこれに乗って終点の新宿まで、紗世は代々木上原まで乗っていく。
ドアが開くと既に混み合っていた。降りる人もいなかったので俺と紗世は半身だけ列車に乗り、ドアが閉まる直前にぐっと体を押し込んでなんとか乗り込んだ。
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