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彼こそがこの騒ぎを起こした張本人である。あらかじめ自分で、スパイシーすぎるブラジル風ローストチキンを作り、店のものに紛れ込ませておいたのだ。いつも保温式の陳列ケースに並べてあるので、作業は簡単だった。そうして現場を見渡せる店に陣取り、誰が当たりを引くかをうかがっていた。その当選者が幸せそうなカップルと分かったときには、思わずお祝いの言葉をかけに行きそうになったぐらいだ。
もちろんそうするのは自分に対してだけにした。復讐計画の一人目は大成功と言ってよい。あの金髪ハーフの店員には恨みがある。名前はハーバード瑞樹といって、日系ブラジル人らしい。経営者ではないものの責任者らしく、チキンも彼が作っているということが分かったので、今回の計画を立てたのである。店自体は地元でも人気店で、テレビや雑誌なんかでも取り上げられたことがあり、ハーバード瑞樹も人目を引く容姿だからか、毎回看板男として表に出ていた。
それも今や汚れてしまった。これであの店からも客足が遠のくだろう。それが自業自得であることを思い知ればいい。小太りの中年男は、地面に這いつくばっている金髪頭をもう一度目に焼きつけて、店先から離れた。犯行現場に長居するのは危険である。誰に見られているか分からない。
復讐相手はあと四人。彼らから受けた屈辱を、骨をしゃぶるように思い出しながら、男は商店街の路地に消えていった。
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