第二話 屈辱

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「ハバ、行け!」  そんな叫び声がどこかから聞こえて、こちらへ誰かが突進してきた。吉崎浩之はとっさに反応して、いつも持ち歩いている催涙スプレーを吹きかけて逃走したのだが、後ろから鈍器のようなもので殴られて、あえなく捕らえられてしまったのだった。  彼らは五人組だった。男性が三人で、女性が二人いる。追いかけてきた金髪の大男を始め、全員が二十歳ぐらいで、こざっぱりとした身なりをしており、吉崎浩之の趣味を蔑むような人種に見えた。どうせグループ交際でもしている連中なんだろうと思っていると、彼は衝撃を受けた。  オーガニックドールズのメンバーが混じっている。しかもグループのリーダーである伊東せなと、絶対的センターの星山綾火だ。ドールズの中でも特に評価している二人である。彼女たちが言うには、ドールズのメンバーが次々とストーカー被害に遭っていて、その犯人を捕まえるために、ゴミ袋の罠をしかけたのだという。  自分は無実である。小森あずさの件も不可抗力みたいなものだ。けれども音楽に理解のない輩に、スマートフォンの中身を見られてしまっては、いくら活力剤なのだと主張しても無駄である。自宅の電話番号も知られ、警察に突き出されそうになった。  しかしやはり善行は報われるものだ。大須商店街でここのところ放火事件が頻発していたのだが、吉崎浩之は放火犯らしき二人組をたまたま目撃していたのである。五人組はそちらの事件も追っていたらしく、吉崎浩之が警察に目撃情報を提供することで、ゴミ袋拾得の一件は見逃してくれることになり、ひとまず事態は収まったのだった。
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