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会社で残業をしていると先輩に声をかけられた。時間はすでに二十二時を過ぎていた。
一人で、夜、あの廊下を通るのは怖くてしかたが無かった。
仕事の区切りがいいかといったら全くそんな事は無いのだが、仕方が無かった。
招かれた先輩の部屋は俺の部屋と全く同じ間取りで、あまり物が置いて無かった。
冷蔵庫から缶ビールを二本先輩が取り出すと一本を渡された。
先輩はどっかりと腰を下ろすと、ビールを一気飲みした。
「なあ、お前が見た足はどんな靴を履いていた?」
「……紫のハイヒールでした」
先輩は笑顔を浮かべていた。
「あの足は、うちの会社がこのアパートを借り上げた時にはすでに出ていたらしい」
週のはじめ、月曜と火曜だけそこの廊下を歩き回るんだと。先輩は言った。 何で、入居した時に教えてくれなかったんだ。怒りがこみ上げたが、わずかな引っかかりを覚え怒鳴るのはやめた。
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