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* * *  会社で残業をしていると先輩に声をかけられた。時間はすでに二十二時を過ぎていた。  一人で、夜、あの廊下を通るのは怖くてしかたが無かった。  仕事の区切りがいいかといったら全くそんな事は無いのだが、仕方が無かった。  招かれた先輩の部屋は俺の部屋と全く同じ間取りで、あまり物が置いて無かった。  冷蔵庫から缶ビールを二本先輩が取り出すと一本を渡された。  先輩はどっかりと腰を下ろすと、ビールを一気飲みした。 「なあ、お前が見た足はどんな靴を履いていた?」 「……紫のハイヒールでした」  先輩は笑顔を浮かべていた。 「あの足は、うちの会社がこのアパートを借り上げた時にはすでに出ていたらしい」  週のはじめ、月曜と火曜だけそこの廊下を歩き回るんだと。先輩は言った。 何で、入居した時に教えてくれなかったんだ。怒りがこみ上げたが、わずかな引っかかりを覚え怒鳴るのはやめた。
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