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 商店街はすでにほとんどの店が営業時間を終え、閑散としていた。  閉店間際に駆け込みで買ったクロワッサンたい焼きを口いっぱいに頬張りながら、大輔と二人でのんびり目的地に向かう。  歩き食いはお行儀がよくないから普段はしないけれど、今夜は何となく許されるような気分だった。 「ちょっとさ、調べてみるよ」  口の端にカスタードクリームをつけながら、大輔が真剣な顔で言った。 「なにを?」 「遊佐先輩のこと。俺も憧れてた人だから、気になるんだ」  わたしはあえて「ふうん」と気のない返事をした。 「どうでもいいよ、もう」 「……」  大輔は困った顔をした。  どうでもよくなんかない。そんなわたしの本音を知っているから。  本当は先輩のことが気がかりでたまらない。ただ、はっきりさせてしまうのが怖かった。  認めたくなかった。上京した先輩が夢破れ、大須に逃げ帰って来たのだということを。 「……今日は何から歌おうかな」  ぽつりと呟くと、大輔が「うーん」と斜め上を見上げた。たい焼きを平らげ、指先をぺろりと舐める。 「『星を数えて』聴きたいな」  わたしが初めて作った曲だ。OKサインを出して見せると、大輔が「よっしゃ」と大げさに拳を突き上げた。笑いながら、沈んでいた心が少しだけ軽くなったのを感じた。  彼のこういうところに、わたしはいつも救われる。
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