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「相変わらず仲がいいな、2人は」
出て来たのは店長の日高さんだった。白髪の混じった髪と口ひげ。黒いTシャツにスキニージーンズが良く似合っている。
「すみません、日高さん。これ、貴重なギターですよね。サイン入ってるし」
サインは崩した筆記体で書かれており、誰のものなのかは読み取れない。
「ああ、これはね。まあ、大事な預かりものってところかな」
大輔からひっぺがしたギターを丁重にお返しすると、日高さんの目の端に優しげな皺が刻まれた。
「ああ、そうそう。出来てるよ、瞳ちゃんのギター」
日高さんは一度店の奥に引っ込み、わたしのギターケースを手に出て来た。
「急がせちゃってすみません。ありがとうございます」
「大丈夫だよ。仕上がり、確認してみて」
「はい」
ケースを床に置き、そっとふたを開けてみる。愛用のアコースティックギターと数時間ぶりの再会だ。サービスでワックスを掛けてくれたようで、ボディが艶々と光っている。
YAMAHAの初心者向けギターだが、高2の時にこの店で買って以来、大切に使ってきた。
軽く弾いてみると、弦を張り替えてもらったばかりのその音色はしゃんと背筋が伸びていて、少しだけよそよそしく感じられた。
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