プロローグ

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 曲を片耳ずつ分け合いながら、わたしたちはしばらく無言で歩いた。時折、2人の腕が触れ合う。右の頬だけが燃えるように熱かった。 「昨日の、新曲……」 「ん?」 「先輩が最後に一人で弾き語りしてくれた曲って、オリジナルですよね。わたし、すごく好きです」 「マジで? うれしー。俺も今回のはけっこう気にいってっから」  先輩は照れたように笑った。  いつもステージの下から見上げているこの笑顔を間近で見られることに、心が痺れるほどの幸せを感じた。校門まで続くこの急な坂道が、永遠に続けばいいと思った。
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