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「なあ、瞳。今日は弁当屋の前で弾き語りの日だろ」  タバコ棚に補充をしながら、背後からの問いかけに「そうだよ」と答える。 「何時から演奏許可取ってるんだっけ」 「8時」 「もうじきバイト上がるよな。少し待って俺も一緒に行こうかな」 「べつに無理しなくていいよ」 「強がるなよ。サクラでも客が2~3人いた方が格好付くだろ? 付き合ってやるって」 「大輔ってさ」 「なに」 「ヒマだよね」 「おう。まあな」  そう言って妙なところで胸を張ってみせる。  つい憎まれ口ばかり返してしまうけれど、大輔は本当にいいヤツだと思う。  最近始めたわたしの路上ライブには毎回顔を出してくれるし、時々友達まで誘ってきてくれる。ハバくんや坪井くんともそこをきっかけに仲良くなれた。  大輔が応援してくれていなかったら早々に心が折れ、聴衆の憂くないライブを続けることは出来なかったかもしれない。  本当はこっそり感謝している。悔しいから本人には言わないけれど。
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