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 いつも思うけど、お会計の時くらいヘッドホン外せばいいのに、この人。 「734円です」  聞こえていないことは承知で、わたしはカウンター越しに金額を伝えた。  大音量で漏れ聞こえてくるロックナンバーはblurの『Song2』だ。  大好きなグレアム・コクソンのギターが、シャカシャカした騒音となってわたしの神経を逆なでする。  きれいな顔をしたその男性客はぴくりとも表情を変えず、いつもと同じように千円札を出した。指先には今日も白いペンキのようなものが付着している。  おにぎり二個と唐揚げひとパック。コーヒー牛乳。  毎日同じ時間、同じものを買っていく。そしておそらく、これが彼の晩ごはんのメニューだ。 「たまには野菜も摂った方がいいですよ」  小さく呟いてみたけれど、当然ながら聞こえるはずもなく、視線さえ合わなかった。  たかがコンビニ店員に興味を引かれることもないのだろう、彼はレシートと一緒に小銭をポケットにねじ込み、さっさと出口の方に向かっていった。 「ありがとうございましたー」  どうせ届きはしない感謝の言葉を呟き、その後ろ姿をぼんやり見送っていると、 「こんばんは」  カウンターの上にウエハースチョコがポンと載せられた。立っていたのは、ヘンテコなサングラスをかけた怪しい男だった。  胡散臭い七色のミラーレンズに、わたしの仏頂面が映り込んでいる。
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