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その日以来、塚原からのメッセージは、毎日のように送られてきた。アルバイトがある日は当然断るのだが、アルバイトの無い日は大いに迷った。塚原のお母さんの料理は絶品だし、俺を気に入ってくれているのも凄く居心地が良い。
だが、塚原のお姉さんが居る奥の部屋の存在が気掛かりだった。あそこから感じる視線は、気にすれば気にするほど身体に纏わりつくように不快だし、底知れぬ不気味さを感じる。それに、はっきりとは言えないが何かがおかしいのだ。出来る限り塚原の家には近寄りたくないとさえ感じ始めた。
それから数日ほど経った頃、大学内で塚原が俺を訪ねてきた。塚原に対しても苦手意識を抱いた訳ではないが、少しだけ気まずさがある。だが、俺の意に反して塚原は何も気にしていない様子だった。
「父ちゃんが絵を描いたんだよ。お前をモデルにした絵だから貰ってくれよ」
「俺がモデル? なんでそんなことをするんだ……?」
「かなり気に入ったらしいんだよ、お前を」
塚原から渡された絵は思っていたより小さく、キャンパスノートほどの大きさだった。光沢感を帯びた滑らかな素材の白い布で丁寧に包装されているので、どんな絵なのかは見えなかったが、正直なところ見たくなかった。
とりあえず礼を述べてから絵を受け取ると、塚原は意味深な笑みを浮かべてから足早に立ち去ってしまった。
その後は絵の事が気になって授業に集中できなかった。帰宅してからもやはり塚原から貰った絵が気にかかり、何もする気が起きなかった。見たくはないのだが、確認しないと余計にもやもやとしてしまう。しぶしぶリュックサックから絵を取り出し、白い布を剥がしていく。
一体、どんな絵が飛び出してくるのだろうか。
大体、何故俺をモデルにしたのだろうか。
ただただ不気味だった。そもそも、塚原の父親に気に入られるほど会話を交わしていない。物凄く不吉な予感がする。一度嫌な想像をしてしまうと、段々と悪い方向へ転がっていく。中々恐怖心を振り払うことができず、白い布を全て剥がすまでに勇気と時間を要した。
意を決し、白い布をはらりと取り外す。
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