風と実

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よほど退屈か多忙か。 そこから抜け出す条件みたいに結婚を口にする西野に呆れる。 久しぶりに揃った4人居酒屋にいて。 「会社で知り合いです。なんていわないだろ」 「気付いてるなら無視することないでしょ」 会って早々に空気悪いと感じたままテーブルに着くなり西野は成見に突っかかる。 成見は…面倒くさそうだ。 何回か顔合わせてるけどだいたい西野が酔い潰れてるから酒の入ってない状況でこの2人が揃ったのは成見が転勤で戻ってきてから初めてなのにすでに揉めている。 4人掛けのテーブルで向かい合って自分らで座ってんだけどな。 「しかし久しぶりだな。これで揃うのって。」 自分から安野、西野、成見と指さしてみせる。 「まぁ…ユウが覚えていればね。いつも酔いつぶれてたから」 「失礼な。一応…記憶はある」 「ふっ…」鼻で笑われる。 「なに笑ってんの?」 「いえ別に」 また揉めるか。 というより西野以外は鼻で笑ったんだが変わらず成見ばかりが標的になるようだ。 高校の時からという変わらない2人の関係に今が28歳であることに錯覚もおぼえる。 西野は外見は良いが中身は他人任せで流れるまま。 仕事は忙しそうだがパッとしない印象しかない。 いつも自信ないオーラが半端ない。 安野は、らしい雰囲気とはっきりした口調。 仕事も引きずらないし、生真面目さが仇だが自分のことは自分で決められる強さがある。 成見は。しばらくぶりに会った横の男は高校の時は正直いって老けていた。 今と比べればだが…。 落ち着いているというのか興味がないことが多いのか表情がほとんど変わらない。 そんなこいつは誰にも自分のことを話さない。 仕事は出来るらしい。 一緒に仕事をすることになった西野がそういっていた。 社会人としてはダメらしい。 それも西野からの情報で分かる気はする半分で残りはこの女の愚痴だとも知っている。 西野は成見に甘えている。 初めて会った時からだ。 性別を超えているように接している。 たまに人としての成見をぞんざいに扱う。 それが目の前から大事なものを失くすことにもなったんだがこの女は身に染みているんだろうか? 成見も成見だ。 それを甘んじて受け入れているようで西野への態度はいつも変わらない。 分からせてやるべきだと思うが本人がそれを望んでいない。
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