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畑は老人らのたまり場のように年齢層の偏りが半端ない。
少しでも労力の代わりが出来たらと僕はその手伝いをしている。
子供の頃はこの辺りに住んでいたし、ここにいる人たちのほとんどは顔なじみで世話になった人らも多く良かったら手伝いたいと話したら快く輪に入れてくれた。
昼食の間は家に戻る人もいる。
畑から遠い人は木陰で昼休み。
「いいから。食え」と渡されたおにぎりと漬け物。
食べたら美味しい。けどもあまり食べたくない。
最初に断ったものの聞く耳は年寄りの耳が遠くてなのか、ただ聞く気がないのか毎週末この昼食が続いていた。
ただ食事をするとすぐに睡魔に襲われてしまう。午後からの作業に入るまでに記憶ない昼寝になってしまうのが嫌でいつもは栄養補助食品を少々とブラックコーヒーのみで済ますのがどうやらお気に召さなかったようだ。
西野も同じように勧められてたな。
「美味しい」とか言うもんだからますます食べるのを勧められ、帰りの車に乗り込んですぐに「やばい。あんなに食べたら太るって」なんて愚痴っていた。
もう一年も前の出来事。
今年は呼ばないと決めていた。
「落ち込んでもないなら気分転換は自分で見つけたらいい」そう言うと君は相当に納得できないらしく怒り出して口喧嘩にまでなった。
それでも折り合いがつくことなく今年は僕一人でここに通っている。
わかったことは西野がここに来たいと言っていた以上にこの農作業に関わっている人らが来ることを望んでいたということだった。
すごいな。と素直に思う。
君を見つけた人は君をもう一度会いたいと思うんだ。と。
いるだけでいい。
笑顔がいい。
キレイだからいい。
愛想が良くていい。
なんだ。僕の反対じゃないか。なんてことは言わない。
食べているもらったお握りにしても漬物にしても本当なら君のように喜んだらいいんだろう。
黙々と働くよりも君のように声のかけやすい雰囲気であればいいんだろう。
君がいればいい。
でも、それじゃダメなんだ。
君の夢を叶えるまでは目の前にある楽しみが「農作業です」なんておかしな話で見つけるべきは「ずっと一緒にいられる人」が優先事項であること。
それのためなら君が幸せになってからだっていいじゃないか。農作業なんて。
趣味の世界でまた楽しめばいい。
もっと欲張ったっていいんだよ。
君なら叶うはずなんだって。
いつまでグズグズしているのか。
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