人知れず

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「じゃあ。今日は一緒にご飯食べられて良かったよ」完食して少しの時間で席を立つ成見に「ん?もう帰んの?」真崎の驚いた表情。 「会社に戻る。まだ仕事残しているんだ」 「マジか? 下手でもこいたのか?」これには成見も笑った。 「 違うかな。どうかな。わからないけどね。こっち来たばかりで時間足りてない」 「 じゃあ。また会おうぜ」そういう真崎と成見の空間の時間が止まったみたいな静けさに包まれる。 「持ってねえの?もしかして?」真崎は自分のスーツから取り出したスマホを見せると「ある。な」成見は忘れていたのを思い出したような顔をして同じように自分のスマホを取り出してみせる。 「なんだよ。出し惜しんでんのか」 「惜しんでる?」 「ほら。交換すんぞ」 「あー。無理」 「無理?入れてなくて?」 「仕方がわからない」 「はあ?入れてないわけじゃないのに?」 「のに。ね」 「貸せ」成見の手からスマホを奪うと「すごいな」と口から漏れるほどの手際の良さで個人情報が真崎によって抜き取られていく。 「ナリのこっちにも来た」「は?」安野の声に成見の目が丸くなる。 「ニシにも送ったわ。オレら全員分お前にもやっといてやったわ」真崎から戻ってきた自分のスマホがやたらと情報量が多くなっていることに気づいて成見のまばたきのスピードが上がっていた。
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