人知れず

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「結局、ユウと話さないままか」すっかり眠り込んで動かない西野を頬杖つきながら眺める。 「また会うさ」真崎の横の席に成見はいない。 いれば周りを明るくする真崎の顔もいやに真面目にみえた。 たまにこんな表情をすると胸の奥がザワザワとさせられる。 「 ナリ。らしかった」本当に変わらないのは成見だけと思えるほど。あの頃から会えてなかったというブランクがそう思わせているのかもしれないが。 「あいつさ。たぶんオレより先にこっちに気付いてたと思う」眉を顰める真崎は相当に悔しそうで。 「あぁ、変わってねぇなって。なんにもさ。何年も経ってるってのにあの頃のまま」吐き出す言葉にもそれを滲ませる。 男らしい顔つきからあの頃より成熟している異性であることを認めるしかない。 彼の目尻に深くなっていくしわの深さも意識している私自身を認めるしかない。 久しぶりに会えた親友の成見のことで頭を悩ます彼と同じ空間で同じ悩みを共有しているのは自分だけという優越感を認めるしかない。 よくやったと思うよ。とはなぜか言えない。 あなたの思いが通じるといいね。なんて耳触りの優しい言葉なんて選べない。 「リョウらしくやってればどうにかなるかもね」 皮肉みたいな言い方しかできない。 わかっているのにね。
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