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仕事が出来るというのは語弊があるのかもしれない。
成見の仕事は早い。とは思う。
「彼。大丈夫か?」藤島の問いにも首をかしげるしかなかった。仕事にかける意欲が旺盛な藤島でさえ通りかかるたびに机にへばりついたまま仕事をこなしている成見の存在は気になるようだった。
何も変わらない。所作もいつも通り。
仕事量も減らないまま。
「私達、外様だから」北沢さんは、さも当然のように言った。同じ会社であるはずなのに。
私達の会社と合同であるはずの仕事も北沢主任と成見は彼らと同じ会社で働いていながら面倒な仕事を任されている。としか見えてなかった。
誰もいない。一緒に仕事を進めていく仲間が成見のそばにいない。それでも当然のように目の前の仕事を消化していく。
「仕事の話しはするつもりはない」安野や真崎と居酒屋で飲んでいるときにそれとなく聞き出そうとした私に対して冷めた目線で成見はそれ以上の踏み込みを拒否した。
見ていて私は恵まれているだと感じるようになった。
うまくいかなくて悩んだり才能ないなと自分を卑下したことも何度もあった。辛い時期も何度もあった気もする。それでも続けてこられたのはそれ以上に認めてもらえるだけではない達成感と常に仲間がそばにいて助け合える関係があったから。気づけるものがあるだけ私はマシなのかも知れない。
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