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「おまえだけだよ。知らないの」
真崎に言われ頭の中は真っ白になった。
「オレもそれ聞いてたし。あいつと一緒にいたしよ」
「私はあんたから聞いたけどね。成見にいうなって言われたんでしょ」
「えっ?」
安野を見て慌てた。
あまりに整理のつかない私の最後の手段はこの2人。
いつも何かあるたびに高校生の頃からの相談してきた大事な友達に成見との間にできた悩みを打ち明けた。
「それ言うなって。っていうかあいつには絶対に言うなよ。それこそ友達どこじゃなくなる」
真崎は私にそれほど興味がないように安野にボヤいた。
「お前には言うなって言われたんだよ。好きな人と付き合えたんだからいらないことで無駄な時間は必要ない。んだとさ」
「馬鹿だよなぁ。あいつ」真崎はアルコールを一口含んだ。
「お前みたいなヤツのためにそんなこと言うなんて。好きな男に付かなきゃならない嘘なんて元々上手くなんていくわけねぇのに。おまえのせいでオレは友達1人なくすところだぜ」
真崎がイラついている。のは顔も見られないほどわかっても助けを求めたい安野でさえ黙ったまま。
「言ってくれたら…」
「知ったのだいぶ後。言ってもしょうがないぐらいね」少しの間の後「だいたいどうしてそんなこと言ったの?らしくない」呆れたような感じありありでより肩身が狭くなった。
「どうせ浮かれてたんだろ」もう真崎の言葉にうなだれるしかなかった。
「成見がどうのなんてまったく気付かないままいたんだから」
そうだ。
私は成見がどうなったかなんて知りもしなかった。
いつも通りに話してたと思う。
いつも通りの机1つ分のスペースは変わらずだったと思う。
「泣くなよ。成見も泣いてないのに。被害者みたいな顔するな」
「リョウ」そう安野が窘める。
「なんかオレらしいってさ」
「成見いつも私たちの横にいないんだよね。いつも半歩後ろにいるの。気付いてた?」
首を小さく横に振る。
「意識的にそうやってんだよ。これぐらいがちょうどいいって言ってさ」
それは胸に刺さってくるような痛みさえ感じるような錯覚に陥る。
一緒に仕事をしていても成見はいつも私の視界の端にしかいないのはそのせいだったんだ。
私の少し後ろに下がっていた。
近くてもズレを感じたのはそのせいだった。
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