居酒屋が好き

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「はい。ありがとう」目の前まで持ち上げたシーサーの置物の奥に見える西野の疑ったような目線。 大きいはずの目も七割減で人相そのものが変わっている。 それ以前に何かあったかな? そんな目で見られなければならないほどいざこざあった最近じゃない気もするんだが。 西野が気にしやすい性格なのは知っている。 もしかしたら何か余計なことを言ったのかもしれない。 「これ?どう扱うんだろうね」ほとんど呟きみたいなもの。 「魔除けだって」肘ついた手に顎をのせて投げやりにこれまた呟いている。 よく見たら僕ではなく流し目みたいに横に目線は流れている。 さっぱりだな。 さっぱりわからない。 何があったのかもわからない。 それでも機嫌が悪いことぐらいはわかる。 西野が機嫌が悪い原因が僕らしいことぐらいはわかる。 魔除けになってないじゃないか。 シーサーに心の中で言ったところで意味はない。 何もしていない人間に何かしてくれるほどお人好しなシーサーでもないだろう。 ましてや西野からのおみやげではこっちより彼女にご利益ありそうだし。 まぁ。それならそれでいいか。 どうせ僕が役不足なのは重々承知している。 出来ることをしても出来ること自体が足りてなかったら押そうが上げようが手助けにもなってなかったことぐらいは。 仕事より難しい。 時間をかけようがお金をかけようが人の気持ちがどうかなんて知ることは難しい。 西野は特に難しい。 知った気もするけどそれはこっちの気持ちで本当はまったくわかってないんだろう。 現に今、こうなってるしな。 もはやこうやって目の前に座っても何も言うこともすることもない。 他人の顔色ばかりを気にしてそれに合わせていたはずの西野じゃあ。ないな。 出来るだけ目立たない様に周囲の一部に溶け込もうとする西野じゃあ。ないな。 もはや結婚したい相手さえいたら本当の気持ちを表に出せるようになった西野の夢なんてすぐにでも叶う。 はず。 僕の目の前に座ってる場合じゃない。
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