居酒屋が好き

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「よし」 なんて満足げな顔してる。 こんなになるとは想定外でちょっと嬉しいけど顔には出ないように。 「ちょっと。椅子戻して」 「あぁ」 適当な返事をして椅子に座りなおした成見はシーサーの顔をこっちに向けて静かに寄せる。 「西野は買ってないんだろ?自分の」 「そうだけど」 「だと思ったよ」 シーサーの背中を見るようにしながら目を細めている。 首をかしげると鼻で笑われた。 「相手のことを考えてから買うだろ。それで疲れて自分のことは面倒くさくなるから買わない」 まるで君のことばかり考えて選んでたみたいな言い方にも聞こえるけど。 「西野らしいけどさ」 何かを気付いて瞬間しかめっ面になって苦笑いになる。 「ごめん。すぐ余計なこと言いそうになる」 「あぁ。まぁ」 もうないんだっけ。 君が忘れていたことは私も忘れていて。 そんな顔するぐらいなら失くさなくてもよかったのかもよ。 なんてね。 「そう。それで。君が持つのはどう?」 思い出して意識は2人の向かい合うテーブルの真ん中に置いてある1対の置き物へ。 「次は君だろ。安野も真崎もなら順番は次は西野。君の番」 「ユウの?」 自分を指差したら「そう」と成見が頷く。 「 一対なんて最強なのそばに置いていたらさ。絶対あると思わない?」 あぁ。そういうこと。 ついさっき興奮した表情を見せてたのはこのことか。 シーサーが一対かを確認したのも。 わざわざ並べてスマホで写真撮ってたのも。 「西野のそばにずっといてくれる人が今すぐでも現れそうな気がするんだよね」 なぜこの人は私の未来のことでこんなに嬉しそうに話ができるんだろう。 「そのために君に必要だから着いてきてくれたのかもしれないよ」 少しも嘘のないように真っすぐ視線の合わせたまま。 「なら。西野が持ってた方が良い気がするけど。どうかな?」 変に饒舌で良いもののように勧めてくる君はまるでセールスマンのようで。 「ははは」 下手くそな笑いで流れ出る涙を誤魔化すように両手で目頭を抑える。 いつになったら。 君は自分の未来を求めるようになるのかな? いつまでも。 こうしていられる未来を求めることはわがままかな?
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