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「ありがとう」
なんて手を差し出すと条件反射で恐る恐る伸びてくる成見の手じゃなく手首を掴む。
「本当にありがとう」
引こうとするより早く今度は両手でガッチリ掴んで自分の前まで。
「いつもいつも気にかけて頂いて」
私に引っ張られてテーブルに上半身上がっているみたいになってる。
「もの。すごく。嬉しい。んですけど」
目を丸くする成見の前には並んでこっちを見るシーサーもいる。
「 いでででで」
力込めて。
間違い。
思いを込めて。
「なんで。いつも勝手かなぁ」
親指でギュッとツボを押してあげる。
「マ。マジか」
苦痛に歪んでこっちを見るから出来る限りの笑顔を首傾げながら。
それを苦いもの口にしたみたいな顔してくるからより強く押すとテーブルにおでこをつけて「うー」とか「んー」とかうめき声をあげるだけになる。
相変わらずの硬い手。
ただ押しても効かないから最初からこっちも本気でするしかない。
「やばいな。これ。絶対に。そろそろやめよう」
引こうとしても私が止めたら君は止まる。
「いいよ。寝ちゃえば」
笑えるほど簡単に君は寝落ちする。
「馬鹿言うなよ。迷惑はもうかけない」
相当に力入ってる言葉じり。
「じゃあ頑張って。で。その間に聞きたいことあるんだけど。大丈夫?」
「大丈夫っていうなら、やめてくれませんかね?これは厳しい状況ですが」
「迷惑はかけない。んでしょ?なら大丈夫でしょ」
生真面目な成見らしく何も答えられないままうつ伏せで現状に身を任せる。
ことにしたみたい。
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