居酒屋が好き

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対して目立つ外見でもない。 対して面白いことが出来るヤツでもない。 大した大人になった気だってしない。 変わらずに裏切らない。 変わらずに周囲に流されない。 変わらず安野や西野からの信頼はオレより上。 これだよ。これ。 要はこいつが原因わけだ。 成見多喜というオレの変わった友人は自分より誰かが大事で。 耳に残っている擦り傷の名残りもこっちが気にしていても成見は気にしてない。 「殴る理由があっただろ」 そんなの当然じゃないだろ。 ただの嫉妬。 ただの衝動。 それだけ。それだけだ。 なのにこいつはオレのために泣く。 「ありえねぇんだよ」 単なる捨て台詞。 単なる負け惜しみ。 「良かったな」 一方的に殴られるままだったから傷だらけで血が出ているのは成見なのに心の中は完膚なきまで打ちのめされた気分になった。 泣きながら笑顔はおかしいだろ。 お前をそうしたのはオレなのに。 この人はわかりやすい。 嬉しいことも。 悲しいことも。 苛立ちも。 切ないも。 少し複雑に見えるのは私のせい。 成見を頼り。 あなたを遠ざけるようにした。 何かのせいにして無理矢理あなたを自分のものにするぐらいなら最初から何もなかったことにしてしまうことを選択した。 どうせ。私の代わりなんていくらでもいると。 選んでもらえるだけの自信が私にはなかった。 勉強も仕事も他人より出来ていると思い込むことが唯一の私の自己同一化だったから。 女の私に取り柄なんてものは何も見いだせずにあなたの前にいることに不安しかないでいた。 泣くしかない女なんて有り得ない。 笑顔しかない女なんて有り得ない。 可愛いしかない女なんて有り得ない。 私は西野結実みたいな女にはなれない。 「オレが愛してる」 誰も愛してくれないよ。私みたいな女。 「お前のままでいいんだよ」 可愛げないもなにもかも。 「オレが信じられないなら」 泣いて乱れたからだけでしょ。 「オレを好きな自分を信じりゃいいだろ」 自分に自信があるのに変なところで成見に劣等感がある。 自分にないものを持っていることでなら。 成見も。 西野も。 あなただって。 私にはないものを持っている。 誰かを否定しないと。 自分のダメな部分ばかりに目が向く。 そうでもしないと私自身が私を肯定できない。 それでも。 いやらしさを曝け出した私を真崎は受け止めてくれた。
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