居酒屋が好き

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「それで証人。頼むわ」 「マジで?私でいいの?」 「いい。って言うかお願いするのこっちだから。ユウには私の証人になってもらえたら嬉しいんだけど」 「私でいいならいくらでも頼まれるよ。リリだもん。当然じゃん。じゃあ。リョウは?」 親指だけ立てて自分の横をくいくいと指差す。 その先ですっかり寝てる人を確認して眉を寄せる西野。 「なるよねぇ。やっぱり」 安野と真崎は同時にその顔に頷いた。 「無理って言いそう」 「言うね」「言うわな」 成見を知る三人の認識は共通している。 結局は成見は証人になった。 すったもんだの末「じゃあよ。子供の名前考えんのとここに名前書くのどっちか選べよ」の二択に迫られた結果で「なぜこんなことに」なんてブツブツ言うくせに書くときはものすごい緊張感が漂っていた。 「せめて出来るだけのことしないと」 「名前書く以外にやれることないけどね」 「名前書くだけに集中しないと。ただでさえ縁起悪いイメージしかない自分の名前書かなきゃならないんだ」紙の上に髪を敷いてその上にペンを持った手を置くのにも新しいおしぼりで手をまんべんなく拭く。 終いには「こんなところじゃなく、日を改めた方がいいんじゃないか」で「いいかげんにしろよ。いくら時間かけてんだよ」真崎が成見にイライラしてしまうぐらいだった。 「楽しかったなぁ」そう成見。 「真崎も安野もいい顔してたな。目の前にこんなに幸せ見える世界があるなんて生きている間に見られるとは思いもしなかったから。まさか保証人までとは。だけどねぇ」 珍しくそんな言葉を呟くから振り向いて確認してみる。 「そうでもない?」目が奥を見るような目線で見られて「楽しかったけど?」なぜか疑問形で返してしまった。 並んで歩かないからいつも首だけじゃない肩から振り向かないとならない。 それで聞かれたことに慌てたせいで目が泳ぐのと一緒に勢いよく前を向てしまう。 「もしかしたらさ」 居酒屋から駅まで。 私と君の2人だけ。 「寂しいとか。かと」 「別に」咄嗟に出た言葉。 「そうか」とだけ君。 少しの沈黙。 時間は23時近く人波はほとんどない。 横に並んでいても邪魔にならないぐらい。 かもしれない。
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