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「勝手にね。真崎や安野は違うけどね。言ってたよ。西野を外に連れ出せなくなるって。何もかも面倒くさくなって仕事だけみたいで心配してたって。だから居酒屋だったらしいよ」
本当の君を知ってくれている友達はいるから。
君を見ている人も。
それが嫌でもそれが君。
大事なものだけは見失わないように。
「結婚とか関係なく西野を気にかけているんだよ。そういう人は君の周りにたくさんいる。僕のような人間ばかりじゃない」
期待ばかりを君にかけてしまうようなのもね。
真崎と安野がいなければ僕はここにはいない。
彼らに誘われなければ西野にもまた会うなんてことはなかった。
こうやって過ごすことは奇跡のようなもので永遠ではない。
「ごめんなさい。西野」
ようやく言える。
君が僕を突き放す今なら。
唐突に成見から聞こえた言葉は訳わからないままで振り向く。
深々とこっちに頭を下げている。
「ずっと頭の片隅にあって消えなかったんだ。加知さんがあの時なぜ僕の名前を出して君に聞かなければいけなかったのか」
その顔は罪悪感に満ちているのはわかった。
「考えたってわかりはしない。けれども。本当なら今。西野のそばにいるべきは僕じゃないことぐらいはわかっている。加知さんがいれば。友達の友達でもなかったなら。2人の会話に存在もしなかったなら期待なんて馬鹿げたこと思いもしないだろうな」
視線が外れて遠くを見るように目を細める。
「西野はそのままでもいいのに。あの時に加知さんと君の間に何か悪影響を及ぼしたんじゃないかってさ。勝手に思い込んでなんとか西野のなりたい未来にたどり着ける助けになりたいとか。西野を良く知らないまま僕の勝手で振り回してしまった」
「馬鹿もここまでいくと、どうにもならない」そう呟いてため息を吐く。
真崎や安野よりずっと前から結婚と言っていたいう。
その夢はずっと変わらず持ち続けていたという。
叶えられないでいる時に近くには僕がいることという。
邪魔をしているのだという。
一人で話し続ける成見と向かい合う。
一番近い駅に向かっている途中で人混みは時間的にそんなでもないけれど周囲に私たちはどう見えてるのか。とふと考えがよぎった。
深刻そうな顔した男とそれをただ見つめる女。
別れ話か。
それともただの喧嘩か。
どう見たって楽しいって感じでは捉えられないのは確かか。
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