居酒屋が好き

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君の声も小さいって。 男らしい顔してるくせに。 いつも「ちゃんと伝えないと」とかいうくせに。 少しの沈黙。 「あのね。君の加知さん好きなの。とっくに知っているけどさ。私が好きだったのはとっくの昔のことで勝手な思い込みに一緒にされてもいい迷惑なんだけど?」 本当にこの人は私に似合う相手が加知圭介だと思っている。 いや思い込んでる? 何しろ高校の頃の私と加知先輩が付き合っていたことを本人を差し置いて今も話しているぐらいだしね。 こっちとしてはいい迷惑。 過去の恋愛が君の見ている私の最高ってことを言ってるわけだしね。 それから後はまるで上手くいってないことを暗に言われているようなものだし。 まぁ。 それに近いけど。 今が今だし。 成見の言う通り結婚したいと言い続けてたのも事実だしたどり着いていないのも事実。 君の前で泣いて訴えていたこともあったけど。 だから君は出来るだけの助けになろうとしたのだろうけど。 酒に呑まれただけのことだと軽く流してくれたら良かったのに。 「本当に馬鹿」 思わず口から洩れてしまう。 君は俯いたまま。 その言葉の意味にさえ気づかないままなんだろう。 君が私を傷つけたことなんてなかったのに。 友達の友達。と言った私が君を傷つけたとしても。 「本当に馬鹿」 そう言われても返す言葉もない。 確かに馬鹿でしかない。 使い物にならないのはいるだけで邪魔なら迷惑でしかない。 僕が加知が好きと言われても異論はあるが。 西野と加知の二人が眩しかった。 好きで向かい合う二人が好きだった。 たったそれだけのこと。 「まぁ。確かに。カッコよかったけどね。加知君」 そう。 君らはすごくお似合いだったんだ。 「うわ。なんか笑ってるし。ニヤってしてる」 顔を上げて相当に引いてる感のある西野と目が合った。 「どんだけ好きなの?加知くんのこと」 「あぁ。もし好きというなら」 頭の中を覗くわずかな時間。 「西野と加知さんの2人が好きだったんだよね。すごく幸せそうに見えて」 あの時の君らは。 「ずっと続くんだろうって思っていたんだ」 遠い遠い先を歩く2人。 僕と進む道の全く違う2人。 「君を幸せに出来る人だと。ずっとその手を離さない人だと思っていたんだ。それなのに西野は泣いていた」 お前さえいなければ。 少しでも邪魔になることに気付ける賢さがあれば。
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