居酒屋が好き

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私がどうしたい今を。 君は未来をどうしないと。 なんて。 「本当は。どうなるか不安だっただけなの。自分勝手なんだけどさ」 聞いた誰かがどう思うか? 「リリやリョウがいなかったら楽しい今がなくなっちゃうもの。好きなんだよね。居酒屋でみんなといる時間」 そう思うと心の内をそのまま声にしてしまうのは恐い。 「二人のことはすごく羨ましいし。ずっと幸せでいてほしい。だけどさ」 変わっていく、これから先が見えなくて嫌だった。 当たり前のことだけど。 まだまだ先のことだと思っていたかった。 「なんか。寂しい」 寂しいか。 わかる気もする。 僕がこうしているのはあの二人のおかげで西野もそうだったんだもの。 「悔しい」 「えっ?」 滅多に西野の口から聞けない言葉に驚いた。 なんていう、しかめっ面? 「だって。ユウだけ蚊帳の外じゃないですか」 「だって?」 「そう」 「そう?」 なぜ僕を睨む? 「もしかしたらナリだったかもしれない」 「私ですか?」 「もしリョウとうまくいかなかったとしてもさ。リリにはナリっていう選択肢もありましたよね。あの時」 あの時。 「ないですね」
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