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「…と言われてもな…」
俺は珍しく誰もいない部室で、シャーペン片手にうなっていた。
俺は文章を書くのが嫌いだ。ほっといたら、現代文の単位を落とすぐらい、嫌いだ。
なのに、”西川涼”と名乗る人物から、あらすじを書いてくれと頼まれてしまった。
でも、その西川涼というやつもきっと知っているだろう。俺には、文章力がないって…
そこで、俺は叫びたい。
「お前はバカか!!!」
まあ、諦めは早い方がいい。
とりあえず息を吐き、どうしたもんかと腕を組む。
顎に手をあてて考えていると、ふと通学用のカバンが目に入る。
…あ、そういえば!
俺はカバンを探ってお目当のものを見つけ出す。
あった!
『現代文プリント~誰でもできる論文での要約のやり方~』
洞窟でレベルの高い剣をゲットできた気分だ。
これを使えば、なーんでもできる!
それを見て、要約の方法を習得。
ふむふむ。具体例は省くのか…
そして、タイトルを意識し、肩書きをちゃんと明記する。
なるほど…つまり、空中密室も図書館ゲームも、具体例だから省けばいいのか。
…あれ?じゃあ、何を書くんだろう…
でも、俺は頭を振ってそんな考えを忘れる。
とりあえず、この通りにやろう。とりあえず!
というわけで。
表面上探偵 1の要約。
名探偵の俺、家永圭が、部室引きこもりや、金髪怪力。情報通のお母さんキャラに、天然ボクっ娘という愉快な仲間達と、鮮やかに学校の謎を解き明かしていく、楽しい学園推理ものである。
…これでいいか。
しかし、彼は気づいていなかった。
それはあくまで『表面上探偵』の要約であり『表面上探偵 1』の要約ではないことを…
でも、彼の頑張りは評価しないとね。
というわけで、こんな小言は言わないでおこう。
では。
「非日常」の「日常」を始めましょう。
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