彼女の心を覗いてみたいな

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彼女の心を覗いてみたいな

「気になるあの子の、心の内を覗いてみたい」などというのは、男女問わず思春期なら誰でも思う事だろう。  当然思春期真っ只中の僕だって例外である訳がなく、気になるあの子の心が気になって気になって夜も眠れないのだ。  宿木(やどりぎ)勇気、16才。クラスメートの赤熊(しゃぐま)ゆりさんに、何とか告白したい!と思いつつ、それが出来ないでいる情けない男だ。  はあ、と一つ溜息を吐きながらの帰り道。今日も赤熊さんと話すきっかけがなかったなぁ。だって、彼女は近寄りがたいんだもの。  赤熊さんはマジメで、いつも本を読んでいる。それは僕ら高校生には理解出来ないような、難しいそうな本ばかり。いつもピシッとしていて、人を寄せ付けない、と言う訳ではないのだが、どこか気後れしてしまって、男子からはちょっと距離がある。  成績トップだとか、運動神経抜群だとか、そんな群を抜いた所はないけれど、誰も気に留めないような、地味でさりげない子である。  そんな彼女と最接近したのが、一月程前だっただろうか。  彼女は何だったかの仕事で、重たい荷物を持って廊下を歩いていた。  これ幸いと声を掛け、荷物を持ってあげた。もう心臓はばっくばく。彼女が近くにいるってだけで緊張しちゃって、せっかくの数分間、一言も喋らず終わってしまった。今とても、とても後悔している。  何せ話す理由が無い。共通項がないのだ。  せめて彼女の心を少しでも知る事が出来たら。そんな夢みたいな事を願ってしまうのだ。
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