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「どうするんだ、これ?」
疑わしい限りだが、とにもかくにも心が覗けるのなら使いたい。
……ええい、男は度胸!思い切って口に放り込んだ。う~ん……苦いような、しょっぱいような味で、後味は甘かった。微妙な味。
しばらくすると、行き交う人たちの胸元からにょろんと植物が生えて見えるようになった。アジサイやクロッカス。シクラメンやスイセンなど、種類も色も大きさも、皆バラバラで、法則性がない。これが心を読めている状態?騙られたのだろうか?
ふと目に止まったのが、通りを歩くカップル。幸せそうだが、女性の胸元に咲くあの花、あれは知らない花だな……帰って調べてみよう。しかしこんなに花って色んな種類あるんだな……
「あった」
図鑑を開いて30分。ようやく見つけた。
レンゲ草。小さな植物だ。
「ん?」
何々、花言葉は……「あなたと一緒なら苦痛が安らぐ」?あぁ、確かにカップルだったし、似合う言葉かな。
「……もしかして」
僕はぱらぱらと図鑑を捲っていく。
「超美人さんのアジサイ、『冷淡』。男子高生連中のクロッカス、『青春の喜び』、控えめそうな女子小学生のシクラメン、『内気』……」
思い返すと、その人の雰囲気と花言葉は面白い程一致していた。
あぁ、なるほど。この心が見える、というのは、花言葉として見えるんだな。
……なんて面倒なんだ。
翌朝、僕はそわそわしながら教室にいた。ここに来るまで図鑑(このせいで今日は鞄が重い)と睨めっこしながら確かめたが、まず間違いない。僕は人の心が見えるようになっていた。唯一、自分のだけは見えないが、まあ自分の心なんて分かっているのだから、必要ないだろう。
あぁ、早く赤熊さんが見たい。一体彼女は、どんな心をしているのだろうか。
「おはよ~」
来た!僕は教室の入り口を振り返る。そして唖然とする。
彼女の胸元には、ラフレシアが咲いていた。
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