彼女の心を覗いてみたいな

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「ラフレシア……寄生植物」  家から持ってきた図鑑を捲っていく。  一体どんな心理状況なのだろう。不安のままに、ページを読み進める。 「花言葉……『夢うつつ』?」  どういう意味だ?ふわふわしてる……  今までの彼女のイメージは、「ピシッとしてる」女の子。だけどその心の内は、ふわふわしてるという事か?  ……僕らは勝手に垣根を作って、近寄らないようにしていただけなんだろうか?  まじまじと観察してみると、赤熊さんは人からあまり注目はされていないが、クラスからの信頼感はあるようだ。それは彼女のマジメな性格に裏打ちされている。学級委員長ほどのカリスマはないまでも、補佐として就いたら優秀な右腕になりそうな、そんな人物だ。それでなくとも、困った人を見ればパッと助ける、心優しい人だ。  だから彼女を訪ねる人は、それなりにいる。彼女は読書の途中だって拒まない。  一方で、結構ぽやぽやもしている事が分かった。ぼーっとしてシャーペンをカチカチ。ノートに書いてまたカチカチ。しようと思ったらヘッドとペン先が逆になっていて、指に刺さって小さく悲鳴を上げていた。そして誰にも見られていない事を確認してほっとしている。何をしているんだ。可愛い。  他にも漏れ聞こえる話を聞いていると、なるほどふわふわしている。 「ユリー。何読んでんのー?」 「ん~? 洋書の古典の翻訳本だよ」 「うぇ、難しそう」 「そんな事ないよ~。簡単に言っちゃえば、不幸な女の子が色々あって素敵な男の人が現れて幸せを掴む物語」 「何それ、そういうの、好きなの?」 「大好き! 私にもこの本みたいな素敵な男の人が現れないかなぁ」 「ユリ、夢見すぎ~」 ホントにね。  何だかそれだけの事なんだけども、赤熊さんが身近な人に感じられるようになった。  と観察してた所、何だか赤熊さんと目が合う回数が増えてきた気がする。そしてサッと目線が下に逸らされる。見ている事が感づかれたかな?気持ち悪い男と思われる前に、これ以上は控えよう。
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