第1章 6年後

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「言いたくなければ言わなくていいよ。 しかし、夕貴の部屋は俺の部屋に似てるな。」 鋭い指摘にドキマギしてしまう。毎日高村くんのことが恋しくて仕方なかったことを知られるのは恥ずかしい。 「ま、まだ引っ越して間がないから、物がないだけだよ。」 素直になれない自分がもどかしい。目の前に高村くんがいるのに近づくこともできない。 「そう? こんな部屋にいたらあの頃を思い出さない?」 「え、べ、別に…。」 こんな私、可愛くないって分かってるのに… 今でも好きだよって言えたら高村くんは何て言うんだろう? 付き合ってたときは自然に甘えられて触れられたのに… どうしたらいいか分からない。 「なんだ、思い出さないの? 俺なんてずっと夕貴のこと考えてるのに。」 「やだ、冗談ばっかり。」 あまりにもさらっと言う高村くんの言葉が、冗談ぽく聞こえる。
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