第1章 6年後

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「冗談? 夕貴に会うことばかり考えて、今まで頑張ってきたよ。」 高村くんの真剣な目に胸がキューンと甘く締め付けられる。 「ホント?」 「本当だよ。夕貴のことを考えると頑張れた。 世間に認められて夕貴を守れる大人になれたら、会いに行くって決めてたんだ。」 嬉しい 高村くんはずっと私と会いたかったんだ だけど… 高村くんが私を好きなのか?報告したいだけなのか? まだ彼の気持ちが分からなくて… 胸の中はモヤモヤしてるのに聞くことができない。 「ありがとう、会いたいって思ってもらえて嬉しい。高村くん凄く頑張ってるね。元カノとしては鼻高々だよ。」 自分で言いながら、元カノの言葉に胸が締め付けられるように痛い。 彼女って言えたらどんなに幸せだろう。 高村くんの口から好きという言葉は出てこない。 彼の気持ちが知りたい そう思うのに… 「ありがとう、頑張った甲斐があるよ。 ポスター、貼ってくれてるんだ。」 「高村くんが頑張ってるから、それを見て勇気を貰ってる。」 「そうか…、毎日見てくれてるんだ。」 嬉しそうに微笑む高村くん。あの頃と同じ笑顔なのに、心の距離は遠くに感じる。 「うん…」 「また来ていい?」 「う、うん。」 また来てくれる…彼の気持ちは分からないけど 次があると思うとキュンと胸が甘くときめく 「次の休暇は1ヶ月後くらいだから、その頃また来るよ。」 え、もう帰るの? モヤモヤした気持ちのまま…?
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