第1章 6年後

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もし彼に会えることがあったら、私も頑張ってたよ、強くなれたよって言えるようになりたい。 新しいスーツはまだ馴染まなくて何となく着心地が悪いけれど、パリッとしていて背筋が延びる。 歩き慣れた道を歩き、着いたのは懐かしい母校。苦しかった中学時代から逃れるようにここに入学した。 ここで恋をし、友達にも恵まれた。 人並みにオシャレをすることもモデルの仕事にも出会えた。 新卒で親に頼らずマンション暮らしが出来るのは、モデルをしてたお陰だ。遠くから通わないですむ。 そう、今、私の住まいは高村くんが住んでいたクリーム色のマンションだ。 家賃は8万、敷金礼金合わせて32万円。モデルで貯めたお金で支払った。 仕事の報酬はほとんど貯蓄していたから新卒の安月給でも大丈夫だ。 電気製品や家具などを買って独り暮らしに50万以上かかった。こんなにお金を使ったのは初めてで、モデルをやってて良かったとつくづく思った。 4、5年くらい働かなくても何とかなるくらいの貯蓄はある。
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