フランの海

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嫁が海にプカプカと浮きながら、空を見てそう呟いた気がする。 僕もプカプカと浮きながら「やっぱ夏にすれば良かったね」と空を見る。 その時、少し大きな波が嫁を襲った。 嫁の身体は砂浜へ打ちあげられる。 うつ伏せに倒れている嫁に僕は近付き、腕を持った。 しかし、腕の関節が外れて嫁の皮膚が伸びる。 そりゃそうか。 嫁が死んでからもう一週間…… 腐乱死体になりかけているのだから…… 僕は嫁を抱き、再び海へと入った。そして、沖を目指す。 海に帰ろう。 母なる海に帰ろう。 遠くからパトカーの音が聞こえる。 僕は振り返る事なく、全身を海の中へ沈めた。
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