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…姫園クロエ。
窓際のテーブルの席に彼女が座っていた。
昨日とは違うセーラータイプの服を着ている。
色は黒地で同じだが、ワンピースタイプではなく、長袖のブラウスに、揃いの膝丈の膨らみのあるスカート。
昨日のB組での自己紹介の際、会話をしてみたくて声をかけた。
会話とも言えないくらいの言葉を交わしたが、その声が唯の耳から離れない。
透き通った、少女らしい、けれど、意志の強い毅然とした声だった。
そしてその時少しの間、目が合った。
あの瞳。
不思議な宝石のような深い紫色をしていた。
なにか訝しげに自分を見つめていたような気もする。
??
そのクロエの隣には、これもまた目を惹く2人が座っている。
気の強そうな女生徒の口のピアスが見える程の距離にいたので、なるべくジロジロと見ないようにはしたいのだが、どうにも派手な三人組だ。
何故か長身の金髪の男子生徒はメイクをしているし…。
それから、ふと彼女らのテーブルの上を見た。
姫園クロエが箸をつけているのは、コロッケだった。
コロッケ定食──
味噌汁とサラダもついて、350円のお得なセット。
「ふっ…」
なんともキャラクターに合わない物を食べるんだなと、小さく笑ってしまった。
「きつねうどんで良かった?ええよなぁ♪」
坂本に声をかけられ、はい、と返事をして席についた。瞬間女生徒に捕まる。
「あー、小日向先生がいるー!!」
「一緒に食べよー先生ー♪」
はいはいはい…、と困りながら唯はうどんをすすった。
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