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そして現在に戻り、地べたに尻を置いている二人は、話し始めた。 「どんな人って言ってた?クロエちゃんの彼氏」 卯月は、ありったけの情報を頭の中の引き出しからつかみ出した。 「年上さんで、背が高くて…」 「先生、背が高い年上だね」 「頭が良くて、かっこよくて、優しい…」 「教師だから頭は悪くはないよね。確かにイケメンだし。まあ、優しいね」 健士の平坦な声とは逆に、卯月の声は震えている。 「か、髪は染めたりしてなくてぇ、出会いは入学式だと、仰ってましたぁあ」 ついに卯月は半泣きになった。 健士は人差し指を唇に当てて、とくに感慨もショックもないようで、独り言を吐いた。 「決まりだな~。なるほど。だからバスで山岸先生にキレてたんだ♪」 倒れた時にわざわざ唯の名前を出していた。色々あの二人の謎が解けてすっきりした。 すっきりした健士の横で、卯月もなんとか落ち着こうと深呼吸している。 「古尾谷さんっ!このことは誰にも─」 「言わないよー」 ───こういう事はこっそり知って、観察する方が面白い 「相田さんはどうするの?」 卯月は肩を跳ねさせた。 「勿論のこと、誰にも話しませんよ」 「そうじゃなくてさ、クロエちゃん本人には言わないの?知ってるよー。て」 卯月はかくんと頭を落として俯いた。 「相田が知ってるって姫園さんが聞いたら、きっと、迷惑に思われますし…」 膝を抱く卯月は苦笑する。 「そうかな?相田さんは、相田さんが思ってる以上にクロエちゃんに好かれてると思うよ。百合ネェと華都音以外でクロエちゃんと一番仲いいのは相田さんじゃん?」 卯月は顔をあげて健士を瞬きして見る。 「その相田さんにさ、二人を応援してるからね。て言われれば、嬉しいと思う。知っちゃったのに知らんぷりされてるほうが悲しいよ。多分」 「そう、でしょうか…?」 「うん。普通に先生のこと話せる友達がいたら、嬉しいんじゃないかな?それが相田さんなら、もっと嬉しいんじゃない?迷惑とか、クロエちゃんはバカだけど、相田さんの存在を無下にするようなバカではないよ」 健士は木の束を抱えて立ち上がった。 「行こっか」 卯月も慌てて立ち上がる。 何かを決心して、きゅっと唇を噛んだ。 「古尾谷さん」 「うん?」 「ありがとうございますっ」
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