その翌日

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 コンビニの裏手に小さな神社がある。地元民じゃないとわからないような横道から入って、境内の石に腰かけた。 「どっちから食べたい?」 「イチゴ練乳」  私にイチゴ練乳を渡すと、亮ちゃんはソーダ味の袋を破ってガリッと水色を齧った。私も慌てて袋を開けて、パクッと白いバーを咥える。二人で半分まで食べたら交換っこ。  亮ちゃんは嫌じゃないのかな? 私の食べかけなんて。間接キスだなんて思いもしないんだろうな。ドキドキしているのは私だけで。  棒や袋を捨てにコンビニに戻ると、さっきの男の人が車に乗って走り去るところだった。助手席と後部座席には男の人たちが乗っていた。あれ? てっきり車で彼女さんが待っているのだと思ったけれど、家で待っているのかな?  私の視線の先に亮ちゃんも気付いて、大きなため息を吐いた。 「海香は警戒心がなさすぎる。さっきの男みたいなのに車に押し込まれたら、どうするんだ?」 「え? だって、ただアイスを教えてあげただけだよ?」 「俺以外の男と話すな」  私の手を引いてスタスタ歩き出した亮ちゃんに、戸惑いながらついていく。過保護な幼馴染が心配しているだけだ。まるでヤキモチを焼いているみたいだなんて、自惚れちゃいけない。  ここからの道はなだらかな上り坂。傾斜はきつくないけれど、亮ちゃんのスピードについていくのが辛くなってきた。 「亮ちゃん、もうちょっとゆっくり歩いて」 「あっ、ゴメン! ゴメン。本当に」  亮ちゃんは立ち止まって、気遣うように私を見た。 「ううん。私が体力ないのがいけないの」 「海香はそれでいいんだ。海香のペースに俺が合わせるから。俺は……海香の希望を何でも叶えてやりたい」  急にそんなことを言い出した亮ちゃんを、ただ見つめることしか出来ない。 「海香はどうしたい? 東京の大学に行って、俺の家の近くに住んで。毎日会いたい? 休みの日にはこんな風に手を繋いで、どこかに行きたい?」 「うん!」 「でも、まだ半年も先だよな。それまでは毎日電話やメッセージしたい? 週末には会いたい?」 「うん……」  亮ちゃんが何を言おうとしているのかわからない。毎日電話してもいいの? 週末に会いに行ってもいいの?
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