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「海香は……俺のこと、好き? 俺と付き合いたい?」
「え⁉」
あまりにストレートに訊かれたから答えに詰まり、恥ずかしくなって俯いたのに亮ちゃんの追及は止まなかった。
「海香がしたいなら、そうする。海香は俺と付き合いたくない?」
否定文を投げかけられたら、そんなことないと言いたくなる。どう答えればいいのか正解がわからない。でも、亮ちゃんは私の希望を叶えてくれると言った。私が付き合いたいって言ったら、付き合ってくれるの? ホントに?
「亮ちゃんとお付き合いしたい。ずっと亮ちゃんのこと、好きだったから。ずっと忘れられずに好きでいたから」
必死すぎて涙目になった私。亮ちゃんの目が細くなって丸い弧を描く。
「そうだな。じゃあ、付き合おう。そうと決まれば、早くおじさん、おばさんに報告しなくちゃな」
「え? 報告って何?」
「海香と俺が交際を始めたってことと、来春、上京したら俺のマンションの近くに住むってこと」
「は?」
「大丈夫。俺がちゃんと話すから」
「いい! 話さなくていい! いちいち親に交際スタートの報告なんてする? それにまだ東京の大学に行きたいってことも話してないし」
昨日は亮ちゃんが来て、うちの両親も大喜びだったから、進路の話をする暇なんてなかった。
「大体、亮ちゃんに再会した翌日に、やっぱり東京の大学に行きたいなんて言ったら、亮ちゃん目当てだってバレちゃう。」
「……東京に行きたいのは、俺目当て? 俺のそばにいたいから?」
抱き寄せられて、亮ちゃんの胸の中に収まる。
「亮ちゃんがいなくなった八歳の時から、ずっと東京の大学に行こうって思ってた。亮ちゃんに会いに行こうって」
ドキドキとうるさい心臓の音は、私のと亮ちゃんのと二人分。同じぐらい速かった。
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