ウミ

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「……で。 なにかあった?」 ひとしきり通学への文句をぼやいたあと、口をつぐんでしまった相手。 これと言って話すようなネタもないので、こっちから沈黙を破りたずねてみたけど、返事はなく。 その代わり、そよぐ浜風が僕の前髪を揺らし、波音とともに背中へ抜けていった。 ずっと忘れたふりをしてたいけれど、正直言うと、お互いどちらも期末試験が間近にせまっていて。 本当は家で大人しく、机に向かうべきなんだろう。 気分転換しようと誘われ、のこのこついてきたものの、帰ったら二人して母さんに叱られるかもしれない。 あんまり長居もしてられないはず。 だけど浜辺に腰をおろし、黒く波打つ沖を見つめながら、ウミの口は妙に重たかった。 あぁ。 何かあったんだと確信する。 だからこそ、こんな場所で今、自分はこうしているのだろう。 しょうがない。 もうしばらく、このだんまりに付き合ってやるか。 いつも気丈なように見えて、けっこう繊細な部分も多い、この相方に。
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