8人が本棚に入れています
本棚に追加
「……で。 なにかあった?」
ひとしきり通学への文句をぼやいたあと、口をつぐんでしまった相手。
これと言って話すようなネタもないので、こっちから沈黙を破りたずねてみたけど、返事はなく。
その代わり、そよぐ浜風が僕の前髪を揺らし、波音とともに背中へ抜けていった。
ずっと忘れたふりをしてたいけれど、正直言うと、お互いどちらも期末試験が間近にせまっていて。
本当は家で大人しく、机に向かうべきなんだろう。
気分転換しようと誘われ、のこのこついてきたものの、帰ったら二人して母さんに叱られるかもしれない。
あんまり長居もしてられないはず。
だけど浜辺に腰をおろし、黒く波打つ沖を見つめながら、ウミの口は妙に重たかった。
あぁ。 何かあったんだと確信する。
だからこそ、こんな場所で今、自分はこうしているのだろう。
しょうがない。 もうしばらく、このだんまりに付き合ってやるか。
いつも気丈なように見えて、けっこう繊細な部分も多い、この相方に。
最初のコメントを投稿しよう!