8人が本棚に入れています
本棚に追加
「ウミ」
名前を呼んだ。 波音に重ね。 消え入るような小さな声で。
寄り添いたい気持ちで、いっぱいになる。
抱きしめるかわりに、自分もコロリとその場に転がった。
ウミと同じ体勢で、同じ空をみあげれば、今よりもっと近づけるような……共感できるような、そんな気がして。
「ねえ、アサ。 教えて?
もう、好きの意味もわかんないんだ、私」
かかとに、打ち寄せる波しぶきが触れては、去る。
伸ばした手の先、そっと指を重ねてた。
夜空には星がなく、月はもっとずっと下。 海面近くを漂っている。
見つめているだけで吸い込まれそうな暗闇が、胸中に運んでくるのは、例えようのない不安。
きっと一人では恐ろしくて、越えられない夜。
最初のコメントを投稿しよう!