ウミ

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「ウミ」 名前を呼んだ。 波音に重ね。 消え入るような小さな声で。 寄り添いたい気持ちで、いっぱいになる。 抱きしめるかわりに、自分もコロリとその場に転がった。 ウミと同じ体勢で、同じ空をみあげれば、今よりもっと近づけるような……共感できるような、そんな気がして。 「ねえ、アサ。 教えて? もう、好きの意味もわかんないんだ、私」 かかとに、打ち寄せる波しぶきが触れては、去る。 伸ばした手の先、そっと指を重ねてた。 夜空には星がなく、月はもっとずっと下。 海面近くを漂っている。 見つめているだけで吸い込まれそうな暗闇が、胸中に運んでくるのは、例えようのない不安。 きっと一人では恐ろしくて、越えられない夜。
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