プロローグ

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「時々、消えてなくなっちゃえばいいのになって思う。 私なんて」 夏とはいえ、夜になると、さすがにちょっと冷たい。 海の水。 「このまま、ずっとこうしてたら、潮が満ちてきて沈んじゃうね。 ぶくぶく」 波打ち際に寝ころんで、夜空を見上げたまま、寄せては返すしぶきに足先を浸していると、なおさら。 「この場所も、朝には海水に浸される。 波が二人をのみこんで……」 そんな彼女の呟き声も、かき消されてしまいそう。 さざ波のせい。 「泡になっても、いいんだよ。 そのほうがきっと、いいんだよ」 繰り返し打ち寄せる波間に、言葉は消えていった。 こぼれ落ちる涙ごと。
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