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「ちょっと待って、アサ! 柔道着忘れてる!」 「うぉっ、ヤベッ! ウミありがと」 またがりかけた自転車のブレーキを握り、慌てて玄関まで駆け戻る。 「あ、ねぇアサ。 今夜ちょっと時間ある?」 「夜? あるけど何? ……って、あぁゴメン遅れそう。 行ってくる!」 ウミとは、中学までは一緒だったけど、さすがに高校は別れてしまった。 こっちが海岸沿いの国道を、ペダルひたすら漕ぎ続け、着く頃には汗だくになるような場所にある学校なら、あっちは家の前を走る単線電車に揺られ、涼しい顔して通える街中のとこ。 しかも自分より五分遅れて出ても、余裕で間に合うなんて、ずるい。 まあ、文句言ったって埋められない学力の差があるんだから、しょうがないか。 同じ環境で育っても、同じところへたどり着くとは限らない。 本人の努力と、DNAはあなどれない。
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