樹の上の子猫

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キーンコーンカーンコーン… 放課後のチャイムが鳴り響く校舎内。 どのクラスも随分と前にHR《ホームルーム》を終え、部活動で残っている生徒達以外、教室内に残っている生徒は殆ど見当たらない。 廊下を歩く生徒達も、まばらだ。 そんな中、二年B組の教室に一人残って作業をしていた実琴(みこと)は、一つだけ溜息を吐くと机の上に広げていた書類をまとめて立ち上がった。 (あとは、これを職員室に出して行けば終わりだ) 帰る準備をして、書類を片手に教室を後にする。 昇降口へと向かう途中にある職員室の前で足を止めると、開いたままの扉から職員室内を覗いてみる。 すると、クラス担任が席に座って他の教師と話をしているのが見えた。 「先生、これ…お願いします」 実琴は傍まで行くと手にしていた書類を差し出した。 「おう、辻原(つじはら)か。お疲れさんっ!…すんなり決まったか?」 担任は受け取った書類に目を通しながら聞いて来る。 「いえ、全然です。女子はまだ良かったんですけど、男子は話し合いにもならなくて…。最悪でした」 不快感を隠すことなく言った。 そんな実琴の様子に担任は苦笑を浮かべると、同情するように言った。 「まぁなぁ…長嶋は、男子全体を纏め切れてないからなぁ」 実琴と共にクラスの学級委員をしている男子生徒の名前を出して、先生はワザとらしく溜息を吐いた。
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