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少女がちいさなナイフで果物の皮を剥くのを、竜は不思議そうに見ている。
人間の手の動きが不思議でならないらしい。
「そんな小さな指がよく器用に操れるものだな」
皮を剥いた一切れの果物をその指で受け取って口にしながら、竜は言った。
「人間は、道具を使う生き物。この手が必要なものすべてを作り出すんです」
少女は言う。
「家も、武器も、食べ物も。
でも。巨大な魔獣たちには、とてもかないません。
だから、竜王・・・」
「私は人を守ったりせんぞ」
また、断られてしまう。
それでも。あなたはここにいてくれる。
少女は微笑んだ。
「なんだ?」
「いいえ、ただ、あなたが人の形でいてくれるのが、うれしいの」
思ったままを、少女は口にした。
人の形になって、人を理解してくれれば、きっと。
「私に人の形を取らせたかったと?」
竜は顔を上げた。
「私を人型にしたくて、わざと怪我をしたのか?」
少女はびっくりして首を振る。
「いいえ、違うわ!」
金の眼が怒りの色を帯びて、ギラギラと輝きだす。
「黄金竜の末だといったな。
奴と二人で仕組んで、私に人間の姿を取らせたのか?
私を罠にかけたのか?」
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