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16  少女がちいさなナイフで果物の皮を剥くのを、竜は不思議そうに見ている。  人間の手の動きが不思議でならないらしい。   「そんな小さな指がよく器用に操れるものだな」  皮を剥いた一切れの果物をその指で受け取って口にしながら、竜は言った。 「人間は、道具を使う生き物。この手が必要なものすべてを作り出すんです」  少女は言う。 「家も、武器も、食べ物も。  でも。巨大な魔獣たちには、とてもかないません。  だから、竜王・・・」 「私は人を守ったりせんぞ」  また、断られてしまう。  それでも。あなたはここにいてくれる。  少女は微笑んだ。 「なんだ?」 「いいえ、ただ、あなたが人の形でいてくれるのが、うれしいの」  思ったままを、少女は口にした。  人の形になって、人を理解してくれれば、きっと。 「私に人の形を取らせたかったと?」  竜は顔を上げた。 「私を人型にしたくて、わざと怪我をしたのか?」  少女はびっくりして首を振る。 「いいえ、違うわ!」  金の眼が怒りの色を帯びて、ギラギラと輝きだす。 「黄金竜の末だといったな。  奴と二人で仕組んで、私に人間の姿を取らせたのか?  私を罠にかけたのか?」
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