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竜は少女を抱きあげ、歩き出した。
怒りに顔をこわばらせ、一言も口をきかず、洞窟を出て山を下り始める。
「いや!」
少女は叫んだ。
「いや、いやよ!おろして!
私、ここにいる!やめて!帰さないで!」
竜は歩みを止めない。
小さな手で竜の肩を、胸を叩くが、逞しい身体は微動だにせず、心を固く閉ざし、泣き叫ぶ少女を締め出す。
急な下りにさしかかり、二本の足に慣れない竜がつまづいた。
抱きしめる腕に力が入り、少女は大声をあげた。
「痛いっ!痛いーっ!離してーっ!」
竜がぎょっとして足を踏み外す。
慣れぬ身体でバランスを崩し、とっさに少女を庇ったために、派手に尻餅をついた。
その胸を突き放し、少女が地面に転がる。
唸り声をあげて立ち上がった竜の前に、うずくまる少女。
小さな手で灌木の枝を握りしめている。
涙をぽろぽろ流し、叫ぶ。
「帰らない!帰らない!ここに置いて!」
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