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涙に濡れた眼で、少女は竜を見上げる。
黄金の髪を風に吹き乱し、怒りに震え、歯を剥きだして唸る丈高い姿。
目の前にある両手がひきつり、ゆっくりと開き、閉じられる。
人の姿をとっていても、凄まじい怒気が少女を恐怖で金縛りにする。
身震いするほど恐ろしく、そして美しかった。
(殺される)確信する。
一瞬で首の骨を折られ、谷に投げ捨てられる自分の姿が見えるようだ。
それで、すべては終わり。
些細な事だったと、竜王は私を忘れる。
(殺されても、いい)
この竜に殺されるなら。
死ぬのなら、もう、何も怖くない。
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