凍える声は砕けない

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体中を這い回る手の平に、なにもかもが固まって、動きを止めてしまいそうになる。 冷たい手が気持ち悪い。 「なあに」 甘く返す、こいつの声が気持ち悪い。 首をひねる。 睨みあげる。 「お前なんか、死んだって嫌いだ…!!」 合った瞳は、冷たいのに熱くて、その欲望の色に吐き気がした。 「ごめんねぇ。それ、聞き飽きた」 ニコリ。 条間が笑う。 幸せそうに笑う。 恐ろしいほどの力で見上げた顎を挟まれ、唇に噛みつかれた。 「っいぁ…!」 ぶちぶちぶちぃ、と酷い音がして唇が血に塗れる。 それにまたわらって、条間は俺に囁いた。 「愛してるよ、山クン」 凍える声は、出会ったときから一度も揺らぐことなく、俺に愛を突き刺して、笑った。
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