凍える声は砕けない

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高校生になったことを期に一人暮らしをしていた俺は、たった一人で誕生日パーティをしようと、それなりに楽しもうと思っていたのに、コレだ。 「だって今日、誕生日でしょ?」 18歳の。 ぞわり、鳥肌が立つ。 条間が笑った。 しかも、とろけるような表情で、笑った。 気持ち、悪い。 恐ろしい。 「それが、どうしたんだよ」 今までだって誕生日なんてあった、と言おうとして、面倒になって口を塞いだ。 答えを待ったほうが早い。 「ふふふ、18歳だよ。知ってた?男子が結婚できるのは、18からだって」 そんなもの、知っている。 思わず眉間にしわがよる。 まさか、久々にあってそうそう、愛しているだとか、キスだとか、信じられないくらいの嫌がらせをしてきたこいつは、まさか、まさかだけど。 「結婚しよう。迎えに来たよ」 あまりの気持ち悪さに、力の入らない足を無理矢理に動かして逃げ出した。 つもりだった。 「まあた」 どこか嬉しそうに、声が咎める。 頬を地面に押し付けられて、背に乗った幼いはずの体は重く、触れた熱は凍えそうに冷たい。 「いつも逃げるんだから」 「どけっ…!」 ぎり、と歯を食いしばって抵抗する。 嫌だ、嫌だ、絶対に嫌だ。 迎えに来たなんて、俺は死にたくもないし、条間なんかと結婚しない。 そう思って身を捩りながら、ふと思い出した。     
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