凍える声は砕けない

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そういえば条間は昔からこうだった。 愛してる、なんて明確に言われたことはなかったし、愛するものに向ける優しさなんて一度も感じたことはなかったけれど、時折怖いくらいに熱い何かをにじませて、俺を捕まえて、無理矢理に触る。 俺はいつもそれが嫌で嫌でたまらなくて抵抗した。 別に深いことはされていなかった。 腕とか、足とか、顔とか、とにかく、撫でるだけ。 痛くないし、それ以外何もしなかったけれど、けれど、気持ち悪かった。 俺に触れる手つきも、顔も、声も、瞳も、なにもかもが気持ち悪かった。 俺が条間にいじめられるようになったのも、たしかコレが原因だったとおもう。 俺が抵抗しても、条間はびくともしなかったし、なにをしても辞めてくれなくて、俺はとうとう、「こんな達樹は嫌いだ」みたいなことを叫んだ気がする。 そうしたら、すごい顔をした条間に、思い切り叩かれた。 助けてと泣いても叩かれ、ごめんなさいと怯えても叩かれ、条間は日常的に俺に暴力を振るうようになった。 そうしていじめが始まった。 だから、俺は悪くない。 何一つ悪いことなんてしてない。 こんな、こんな気持ち悪いやつ、死んで、地獄に落ちてしまえばよかったのに。 「じょうま…っ!」 抵抗する。     
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