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「やっとめぐり会った淫蕩にふけるアンタにちょっとイラついてね」
「いん……」
耳慣れない言葉だったから、理解が追いつくのが遅かった。
冴島の言葉尻をつかまえてなじろうとしたのは反射でしかなかったけれど、勢いだけでそれをやってしまうには“淫蕩”というワードは強すぎた。
お酒のせいではなく、頬がカッと熱くなる。
冴島の冷めた目は、あたしをじっと見すえて──やがて長い睫毛が伏せられた。
「参ったわ。計算ミス」
「冴島?」
冴島はいらだった様子で自分のえりあしを強くかき上げると、そのままブラック・ベルベットを飲み干す。
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