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空になったグラスは勢いよくテーブルに戻され、それでも音がしなかったことから彼がまだ酔っていないのがわかった。
正気の冴島の瞳が、ぎり、とあたしをにらみつける。
「だれとつき合おうと、だれのものにもならない女だと思ってたのに」
「冴島」
あたしのグラスも引っつかむと、冴島はそれも飲み干してしまった。
「あ、あたしのマルガリータ」
「そんなもん、またアタシが飲ませてあげるわよ」
投げやりな冴島の声に、らしくない──と思った瞬間。
きれいな指先が、踊るような動きであたしの顎をつかんだ。
「──……!?」
冴島の、荒れひとつないこの手に触れられたことは数えきれない。
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